生徒だけど寮母やります!⁑
私が小走りでライの横まで追いつくと、ライはパッと手首を離した


「もしかして私とライ、同じクラス?」


「ああ」


「よかった!よろしくね」


ライの前髪は結構長めで、目にかかっている

だからよく見えなかったけれど


少し目が細くなって、微笑んでいるような気がした


そういえばさっきから周りの女子生徒がライのことを見ている

確かにこの人、かっこいいもんなぁ


170cmを軽く超える、細いようで筋肉質な体つき


整った顔立ち


私がアイロンをかけておいた制服を、少し着崩して(不服だけど)いるのが様になっている




「6組はここにならべばいいのか」

「そうみたいだね」


私たちは「6」とかかれたプレートを持った生徒の前で立った


「座る順番はどうでもいいから、とりあえずこの4列の椅子のどれかに座ってね」

「は、はい」


指示にしたがって私たちは並んで後ろの方に座る

入学式まであと15分だ


「なんだよ」

「え?」


私の視線に、ライが気が付いて尋ねた


「あ、ごめん見つめて。すごく、綺麗な髪の色してるなぁって」


「色?」


「漆黒のようで、碧が混ざった色。綺麗だねぇ」


「綺麗じゃねーよ」


「なんで?綺麗だよ。宇宙の色みたい。宇宙行ったことないけど!」


「宇宙、か」


ライがフッと笑って、自分の前髪を弄んだ



そのとき、カチャリとライの足元にボールペンが落ちる


ライが屈んで拾ってから横を見ると、目の前には女子生徒が立っていた


「あっ、ありがとう、拾ってくれて」

「......」


お礼には返事をせず、無言でボールペンを差し出す


しかし女子生徒は受け取らずにライを見つめて口を開いた


「あの、私、一人でこの学校に来て不安なの。横、座ってもいいかなぁ?」



え。



ライが座っているのは端っこで、その左横に座るのは私


え?

横って私が今まさに座っている、この席のこと?


「横、空いてないけど」

ライが一瞬こちらに視線を動かして言う


しかしその女子生徒はあっけらかんとしていた


「じゃあ隣の子?一つ席をずらしてもらってもいい?」

「えっ?......あ、あの」

「ダメ?一人で居るのは心細くって」


えぇ......

確かに私の左横......空いてるけど



そんな可愛い顔して頼まれたら断れないよ......


「ど、どうぞ」

私は席を一つずらした
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