生徒だけど寮母やります!⁑
事が収まってから市河に一緒に食事をしたい旨をつたえた景たちは、男子寮の寮母から市河の外出許可をもらって男子寮Bに招待することになった
「にしても、寮母さんはなんだかんだいってトラブルメーカーっすねぇ」
男子寮Bへと向かう道の途中、市河がにやりと笑ってそういうと景は極めて真顔で「えっ」と市河の方を向いた
「『えっ』?、自分の力を過大評価しすぎてんのか何でもやろうとするからひやひやして見てんだよこっちの気持ちにもなれアホ」
ライが呆れ半分に景に毒づくと、景は口をへの字に曲げてそっぽを向く
辺りもだんだんと暗くなり、静かな学校の敷地内に彼らの草を踏む足音だけが響いていた
「でもライ助けに来てくれたじゃん、だから大丈夫」
「景を追いかけてロビーにたどり着くまで道に迷わなかった俺の運に感謝しろ」
何があっても根拠のない自信を持ち続ける景と、なんだかんだ言って彼女を相当心配するライに、市河はくすくすと笑いだした
「なんか咲夜も爽馬も、男子寮Bの人たちって人気あるし近づきがたいイメージあったんすけど、実際話してみると面白いっすね」
今日一番の笑顔で市河にそう言われ、景は思わず嬉しくなる
ライも市河を見て少し口元を緩ませ、「基本バカなんだよ、じゃなきゃあんなことやらねぇわ」と口を開いた
「……っははは!確かに。生徒会にあそこまでするのは最初驚いたわ。男子寮Bすげぇって思ったけど、ただバカなだけなんすね」
「そういうこと」
何故か景が誇らしげに頷くと、ライが苦笑いして景を見る
そして、彼らの足は灯りのついたレンガ造りの建物の前で止まった
市河はその建物を見て、「すげ……」と呟く