生徒だけど寮母やります!⁑



思わずため息とともにそんな感想を漏らし、景は門の中へと足を踏み入れる


すると家の裏口が開いて、一人の女性が忙しそうに出てきた


「あ、母さん」


市河に母さんと呼ばれた巫女姿の女性は、ふとその声に顔を上げる



この人が、日向の……お母さん?


ほんのわずかに身構えた景たちに、その女性は嬉しそうに微笑んで口を開いた


「あれ?日向じゃない。どうしたの、この夏は帰るつもりはないって言ってたじゃない」


えくぼを作って笑う小柄な、美人というか可愛らしい市河の母

「うん、まーそーなんだけどね」

「そちらはお友達?」


市河が事情を説明するよりも早く、景たちは即座にお辞儀をした


「あの、初めまして。日向君の寮の寮母をやっています。笠上景といいます」

「同じ寮で生活している伊吹結斗です」

「小高爽馬です」


おのおのの自己紹介に、市河の母は興味深そうに頷いて口を開く


「はじめまして。聞いてはいたのよ。最近日向が転寮して、そこの寮母さんが生徒なんだって。あなたね。お友達の二人も。何でこんなところにいらしてくれたのかよく分からないけれど、実は今日お祭りがあるの」

「それでここに来たんだけど」


少し忙しそうに早口で言う市河の母に、市河がはっとしていうと、彼女は嬉しそうにまた頷いた


「私は準備があるから、家にご案内して、日向。またあとでお話聞かせてね」



< 250 / 388 >

この作品をシェア

pagetop