生徒だけど寮母やります!⁑
思わずため息とともにそんな感想を漏らし、景は門の中へと足を踏み入れる
すると家の裏口が開いて、一人の女性が忙しそうに出てきた
「あ、母さん」
市河に母さんと呼ばれた巫女姿の女性は、ふとその声に顔を上げる
この人が、日向の……お母さん?
ほんのわずかに身構えた景たちに、その女性は嬉しそうに微笑んで口を開いた
「あれ?日向じゃない。どうしたの、この夏は帰るつもりはないって言ってたじゃない」
えくぼを作って笑う小柄な、美人というか可愛らしい市河の母
「うん、まーそーなんだけどね」
「そちらはお友達?」
市河が事情を説明するよりも早く、景たちは即座にお辞儀をした
「あの、初めまして。日向君の寮の寮母をやっています。笠上景といいます」
「同じ寮で生活している伊吹結斗です」
「小高爽馬です」
おのおのの自己紹介に、市河の母は興味深そうに頷いて口を開く
「はじめまして。聞いてはいたのよ。最近日向が転寮して、そこの寮母さんが生徒なんだって。あなたね。お友達の二人も。何でこんなところにいらしてくれたのかよく分からないけれど、実は今日お祭りがあるの」
「それでここに来たんだけど」
少し忙しそうに早口で言う市河の母に、市河がはっとしていうと、彼女は嬉しそうにまた頷いた
「私は準備があるから、家にご案内して、日向。またあとでお話聞かせてね」