生徒だけど寮母やります!⁑
ライの部屋の中
バタン!
後ろで、ドアが閉まった大きな音がした
「......はぁ」
ライは何もなかった安堵の溜息を吐く
それには、鈍臭い私に対する呆れも混ざっているような気がした
「お前なぁ......」
その大勢のまま
耳元でライの声がする
「ごめんなさい.....」
これでライに助けられたのは二回目になる
私は申し訳なさでいっぱいになりながら口を開いた
「助けてくれてありがとう。で、でも裸なら出て来なくていいってば.....ビックリするよ」
そして、ライから離れようと身を動かす
しかしお互いの距離が15cm程のところでライに身体をがっちり掴まれ、物理的にも精神的にも思わず動けなくなった
「ラ、ライ、近いってば」
「なんだよさっきの」
え......
「さ、さっきの?......あ、ごめん、もしかしてどっか打った?」
「ちげえよ、波屋有姫や他の奴につきまとわれてたとき。他人ヅラしやがって」
「え.....」
ここで有姫の名前が出るのは想定外で、私は思わず言葉を詰まらせる
「えっと.....で、でも、ライ人気者だったね!」
「うるせぇ」
なんか、すごく怒ってる?
よく分からないが、他人ヅラとは聞き捨てならない
弁解する必要がありそうだった
「他人ヅラっていうか.....あの状況じゃ話しかけづらかったし。それに寮母の私にまでつきまとわれたら、疲れちゃうかなぁって思って.....」
それを聞いて深くため息をつくライ
「はぁ」
「ラ、ライ......?」
「あの時のお前は生徒だろ。それに、寮母は生徒と話しちゃいけねぇのかよ」
ライに言われ、私は一瞬言葉に詰まる
「そんなことはない、けど」
「けど?」
「あ、ある意味、寮母には生徒に近づいて、心の面から生徒を見守る役割があると思う
でも、今みたく身体と身体が近づいているのは生徒と寮母の関係じゃな.....いよね?
ここでは私たちはクラスメイトや友達じゃなくて、生徒と寮母の関係なんだよ。
でも、でもやっぱり皆といたいと思っちゃって。
一緒に食事を取ることは行き過ぎていないか、とかよく考えるんだ」