生徒だけど寮母やります!⁑
「じゃあこの寮にはちゃんとした使用人はいねーのかよ」
長めの黒髪をピンでとめた男子から不機嫌そうに言われ、思わず私はビクリと怯む
でも彼の気持ちも、分かるのだ
どの寮にも寮母はいても使用人はいないけれど
誰だってこんな女子高生が自分の寮の寮母だと言われれば、不安になるだろう
そう思い私は急いで付け足した
「もちろん私以外にも寮母さんは学校に沢山います。でも寮母長は私です。大丈夫、そんなに不安そうな顔しないで」
「.........はー........知るか」
彼は依然不満そうな態度でため息をつきそっぽを向く
しかし全員に対して不評なわけではないようで
「俺は大歓迎だよ。こんな可愛い子が面倒を見てくれるなんて」
王子キャラ全開の男子生徒が、そう微笑んでくれた
かっ、可愛いって……
からかわれてるのかな.....
太陽のように明るい髪をした男の子も、笑顔で話しかけてくれる
「俺もそう思う!なんか楽しそうだし。あ、俺、布川咲夜。よろしく」
「か、笠上景……です」
自分が寮母であることを歓迎され、私はジワリと感動しながら咲夜と握手を交わした
そして
最後に口を開いたのは、華奢でいて美少年、しかしどこか難しく冷たい空気をまとう男の子
「ねぇ、君は生徒じゃないの?」
怪訝な面持ちでこちらを見られ、そう尋ねられる
「えーっと......生徒です。でも、皆さんのように午後の学科授業には出ないので、寮母として働きます」
「は?」
「へぇ......!それまた何で?」
「皆学科授業を受けるためにこの高校にくるんじゃん?」
「どういうこと」
うーん.....
言った方がいいかなぁ.....
その時ふと時計をみると、針は昼の十二時を指していた
......あっ、いけない!
昼食の時間だ
「すみません皆さん、もう昼食の時間でした!いま御用意するので、くつろいで待っていてくださいね」
彼らへ向けて満面の笑みでそう言うと、私は足早に調理場へ駆け込む
「.....行っちゃったね。まさかあの子.......景ちゃんがつくるのかな?」
「「「......。」」」
彼らは女高生寮母が消えていったキッチンを見ると、顔を見合わせて首をかしげた