生徒だけど寮母やります!⁑






「いやー、学ラン様になってるわねぇ」


妖術科側の応援テント

ドラム缶の横で白の手袋をはめる咲夜の肩に、新米美人教師、斎藤マナは手をかけて言った


「あ..........斎藤ちゃん?」

キョトリとする咲夜に、マナは何故か誇らしそうな顔をする


「見た!?小高くんのリレー、もうすっごいカッコよかったわね!ただのか弱くて口の悪い美少年かと思ってたけど、あんなに漢を魅せられちゃギャップ萌」

「分かりました分かりました。見ましたよちゃんと。それより次いっちー走るんでそっち見ましょう」


いきなり早口でまくし立ててくる興奮したマナの口を止めると、咲夜はスタートラインでバトンを待つ市河を指差した


「あら、新人君も出るの?」

「いっちーは中学時代は剣道部のエースだったらしくて、期待してるんすよ」


咲夜の期待通りバトンを受け取った市河は綺麗なフォルムでトラックを駆け抜け、二人を抜いて次へとバトンを回す


「「きゃー!日向くんかっこいい!」」

「「いいぞーヒナァァアアア!」」

「「いっちー良くやったー!」」


妖術科の生徒たちからの好感度を上げに上げて、市河は「さんきゅー」と片手を上げて踵を返した


「あの子って結構イケメンだし背も高いし勉強も運動も人より要領よくこなすのよねでも男子寮Bに紛れ込むと結構一般人みたいになっちゃうのが惜しいっていうか」

となりで市河を見ながらブツブツ言うマナに咲夜は、腰に手を当ててため息をつく


会った時から変わらぬそのイケメン好きに呆れながらも、咲夜はマナに忠告した


「てかなんなんですか妖術科側に来たりして。魔術科の副担任がこんなところで俺と話してると.....じ.....自分で言うのもなんですが、結構女子たちに睨まれてますよ。帰ったほうがいいんじゃないですか?」


その言葉にマナは辺りを見回し、自分を睨む女子とデレデレしてこちらを見る男子をなんとも思っていないような顔で見た


「いいのよ、嫌われたってこっちの子たちとは関わる事もないもの。ていうか、私水穂先生の走る姿を撮りに来たの。彼が走り終えたら行くわ」

「なんで先生の走る姿を撮るのかは聞かないでおきますよ」


首から下げたデジカメを掲げてウフと笑うマナを微妙な目で見ると

咲夜は目線を白熱するリレーへと戻した


先生、妖術科、魔術科から各2チームずつが出場するこのリレー


市河と爽馬がいるチームは別々だが、どちらも大健闘中だ


「ねぇ」


となりで腕を組んで前方を見たまま話しかけてくるマナに、咲夜も前方を見たまま答えた

「なんですか」

「あなたはなんで走らなかったの?足、早いんでしょう、他のリレーに出るの?」

「..........でませんよ。俺は、騎馬と綱引きに」

「あなたが特に速いって他の生徒から聞いたんだけど」


不満そうに首をかしげるマナに、咲夜はおどけたように笑う

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