生徒だけど寮母やります!⁑





「まったく.....なんでお前転校の理由も言わないんだよ!納得してほしいなら理由くらい喋れ!」


「まぁまぁ落ち着いて咲夜」


下校中

咲夜はダラリと低めに背負ったリュックの紐を握り締めながら、前を歩く爽馬の背中に文句を言っていた


落ち着けととめる市河も、爽馬が理由を言わないことにはあまり良い顔をしていない


爽馬はくるりと振り向くと

「何回それ言うわけ。言うつもりはないよ。心配はとてもありがたいけど、こっちにもいろいろあって面倒くさいし」


と言ってまた前を歩き始めた


「お前.....!!」


自分たちを相手にしようとしない爽馬と

それにイライラをつのらせる咲夜


子供じゃないんだからさ.....

と市河はため息をつくと、小走りで爽馬の横へと追いついて彼に尋ねた


「いつ、転校すんの?」

「どうだろう.....2月かな」

「2月!?まじで言ってんの、来月じゃん!!.....一年すら一緒に終われないってこと?」

「うん」

「うんってお前.....」


相変わらず爽馬は淡々と喋るし

別に動揺してるわけでもない


まぁこいつ、感情が表に出ないから、色々と思ってんのかもしれないけど


ぜんっぜん分かんね

市河はそんな爽馬にもう一度考え直す機会を作れはしないかと、朝から試みていた


もちろん全て玉砕である

特に印象的だったのは、景の名前を出したときだった


『景が悲しんでも、それでも行くのか?』

『行く』

『景に泣いてすがられても?』

『変わらない。行く』

『景よりも、俺らよりも、お前にとって転校の方が大切みたいな、そんな言い方.....』

『いっちー、言いたいことはそれだけなら、僕は行くよ』



景の名前すら動じず

転校をとるあたり


こいつ何考えてんだと本気で思った


しかしそれと同時に彼の強い意志も感じる

< 364 / 388 >

この作品をシェア

pagetop