生徒だけど寮母やります!⁑
四人が絶句しながら私を見下ろしている
「キャン!」
だ、だから言いたくなかったんだけどね.....
月夜に興奮したら犬ーー
オオカミの一歩手前、小さなシベリアンハスキーになってしまうなんて
「い、犬?お前もしかして社から来た、狛犬なのか?」
そうじゃない
「なるほど、神使の卵」
「さすがにシベリアンハスキー?の神使はいないと思うよ......景ちゃん魔術科だし」
訝しげに呟く爽馬に結斗が苦笑いでツッコミを入れた
「でもどうやら、この状態じゃ景ちゃんは鳴くことしかできないみたいね」
「ワン!」
そうなんだわん
しゃがみこんだ結斗の綺麗な指が、顔の前に近づく
「ふわふわで可愛い」
そして優しく、わしゃわしゃと首元を撫でられた
「人間の景ちゃんに触ったら怒られるけど、これなら怒られないかな?」
えっ......!
「そんなに可愛いなら散歩にでも連れてけ」
「あは、それも楽しそう」
「ギャン!ギャン!?」
あの、ライくん、結斗くん
体は犬かもしれないけど、心は人間だし散歩なんて求めてないんだけど?
私が彼らに吠えると、咲夜が笑って言った
「ははは、なるほどねぇ。オオカミ女ならぬ犬女、ってゆーか、シベリアンハスキー女ね。可愛いなー」
「だよね」
「バウゥ」
かわいい?シベリアンハスキーが!?
どうせならミニチュアダックスとか、トイプードルのが可愛いじゃない
「ま、まぁ分かったよ景、元に戻れ?」
「バウ」
「ん?」
「きゃんきゃん」
「もしかして戻れねぇの?」
「きゃん」
.........。
結斗とライが、自分の額に手を当てて上を向いた
「まじかよ......」
「景ちゃん、いつ戻れるか分かる?すぐ戻る?」
「きゃん」
まぁ、しばらくしたらすぐ戻るけれど、自分ではコントロールできないというか
「そっか、じゃあそれまで一緒にいさせてよ。ムリ言って変化させちゃったわけだし」
「なんでお前ら会話できてんだよ」
真顔でツッコむ咲夜をよそに、結斗は私を抱え上げた
「ほら。中身は100%景ちゃんなんだし、ちゃんと俺らのこと分かってるよ」
「バウ」
「でも、もう夕食の時間なんでしょう。寮母が犬になったままじゃ食べれない」
爽馬が時計を見上げて言った
「くぅん......」
も、申し訳なさすぎる......
「早く元に戻りなよ。僕、自分の部屋にいるから」
爽馬は結斗の腕の中にいる私を一撫でしてから、2階へ上がって行く
「爽馬、景ちゃんが元に戻ったら呼ぶから」
「分かった」
爽馬はこちらに背中を向けたまま返事をした