あなたを待つ夜
仕事が終わった後、豊は自分の行きつけであると言うイタリアン風のBARに優子を連れていってくれた。

店内はとても落ち着いた雰囲気で、BGMのクラシックジャズが心地良く耳に響いてくる。

「とりあえずお疲れさん」

「お疲れ様です」

二人はコロナビールで乾杯した。

「渋谷さん、今日はすいませんでした。あんなミスするなんて、本当にうっかりしてました…」

「おいー、仕事の話はやめなさい」

豊はおどけた口調で言った。

「ごめんなさい」

「あはは、もっと楽しい話しようよ」

「渋谷さんってほんとに優しいですよね。人間が出来てるって言うか、なんて言うか」

「あはは、別にそんなことないでしょ」

優子の見つめる先で長い睫毛が揺れている。

豊の彫りの深い顔立ちはなんとかと言う俳優によく似ていると優子は呑気なことを思った。
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