あなたを待つ夜
それから少しした後、豊が優子の部屋に初めて泊まりに来た。

ボランジェの栓を開け、二人で乾杯をした。

ソファの上で寄り添い合い、何度もキスをする。

「優子、愛してるよ」

「私もだよ」

「俺、ほんとに幸せだよ。お前だけ愛してるから」

「ありがとう。私も豊だけ愛してる」

優子は初めて豊と体を重ねて以来、彼に対する気持ちがより一層強くなった。

豊が度々口にする言葉があった。

“一緒に壁を乗り越えよう。二人で絶対幸せになろう。”……。

しかし豊が妻子持ちだと言うことは紛れも無い事実だ。

いつか顔も下の名前も知らない彼の奥さんに自分の存在がばれ、懲らしめられるかも分からない。

実際のところ彼がどこまで考えてくれているかは優子には分からない。

ただただ、彼のことを信じる他無かった。
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