あなたを待つ夜
豊が玄関で靴のつま先をコンコンと床に打ち付ける音がする中、ボロボロと大粒の涙が優子の頬をつたっていく。

止めどなく涙が溢れる。

こんな思いをするならいっそのこと別れてしまった方が楽なのではないか。

「優子」

豊が戻ってきた。

後ろから優子をきつく抱き締めて、言う。

「ごめんな、辛い思いさせて。愛してる。絶対一緒に幸せになろう。

もうちょっとの辛抱だよ」

豊はずるい。

そうやってまた自分の元から優子を離れなくさせるんだから。
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