あなたを待つ夜
「長嶺さん、良かったら一緒にランチ行きません？」

優子にそう声をかけて来たのは優子より4つ先輩の野澤美穂だった。

優子は彼女とは業務以外であんまり話をしたことがなかったから正直吃驚した。

「あ、はい」

美穂はすごく美人と言うわけではないが、サバサバとした姉御肌でかっこいいと言う印象だ。

「いきなり誘ってごめんね。実は長嶺さんとゆっくり話したいなーって思ってて」

美穂はメニュー表を手に取りながら言う。

二重橋駅前にある蕎麦屋はリーズナブルな価格の割には味が良いと評判でいつ来ても

店内はお客で賑わっている。

「びっくりしましたけど嬉しいです。誘って頂いてありがとうございます」

「いいえ、こちらこそありがとう」

ふと外を見ると偶然にも豊が坂上部長と歩いているのが見えた。

優子と美穂は二人に向かって同時に会釈をした。

するとあちらもこちらに気付いて会釈を返して来る。

「渋谷さんって本当にかっこいいよねえ」と美穂。

「あはは、確かに…」

優子は苦笑いをする他無かった。
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