あなたを待つ夜
それからまたバタバタとした日々が続いた。

俊のことはすっかり忘れていたし、考える余裕も無いほど忙しかった。

ある日、母の明美から一本の電話が入った。

「優子、最近疲れてるんじゃないの?」

「なんでよ?」

「この間会った時、顔がすごく疲れてたから。それで心配になったわけ」

「大丈夫さー。いつものことだから」

「今度の日曜日、美花のこと一日預かるからゆっくりすればいいじゃない。たまには息抜きも必要よ」

「んー……」

なるべく実家には迷惑をかけたくないという思いが今まで優子に無理をさせてきたのかも知れない。

「じゃあお願いしようかな。ありがとうね、お母さん」

「いいの、いいの。優子はチューバー(強い人のこと)だけどね、チューバーでも無理しすぎたら壊れちゃうさー」

「ありがとう」

やはり母は偉大だ。

優子が改めてそう思った瞬間だった。
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