あなたを待つ夜
そして日曜日、俊が約束の時間に車で優子を家の前まで迎えに来てくれた。

“あの頃”はお互い免許だって車だって無かったから、何だか変な気分だ。

「へんなー。(変な感じ。)」

ハンドルを握る俊の横顔を優子は助手席からまじまじと眺める。

「だからよ」

「ねえ、ここよく部活帰りに行かんかった?」

優子はそう言って右向かいのお弁当屋を指差した。

「あー、行った行った。よくあそこでそば(沖縄そば)買って食べたよな。あそこのオバー(おばあさん)もう90超えてるのに元気ですごいよなあ」

「いいことさー」

優子はまるで18歳の自分に戻ったような気分だった。
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