あなたを待つ夜
「私の方こそ本当にごめんなさい」

優子が豊の顔を見上げると、豊は白い歯を見せてにっこりと笑った。

「大丈夫、大丈夫。よし、俺の手掴まって。部屋まで送ってくから」

豊のごつごつとした大きな手は温かく、それでおいてすごく優しかった。

その日以来、優子は常に豊のことを考えるようになってしまった。

そんな自分が嫌だったけれど、いくら相手が既婚者だとは言え、自分の心の中だけで留めながら一方的に想うのは自由だろうと開き直りの気持ちもあった。
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