あなたを待つ夜
学生時代からの友人である比嘉亜里沙と久々に食事に出かけたのは、日曜日の昼下がりのことだった。

「久しぶりさー。最近どんなー?(最近どんな感じ?)」

沖縄を離れて6年の月日が経つものの、沖縄の友人と会えば、自然と口から方言が出てくる。

「実は拓ちゃんと婚約したわけ!見て、これ」

亜里沙の左手薬指にはきらきらと婚約指輪が光っていた。

拓ちゃんとは渡慶次(とけし)拓のことで、優子も彼とは一応顔見知りである。

最後に会ったのはもう2年ほど前だから

はっきりと顔は思い出せないが、確か沖縄出身とは思えないほど、あっさりとした顔立ちをしていたような気がする。

「まじな?おめでとう!じゃあ二人とも結婚したら沖縄に帰るわけ?」

「いや、こっちで暮らすつもり。いずれ子供ができたら帰ろうって話してるけど。やっぱ子供は沖縄で育てたいさーね」

「はーや。(そうなんだ。)とにかくおめでとう。自分のことみたいに嬉しいさー」

亜里沙の目は本当に幸せそうにきらきらと輝いていた。

それはもう人間と言うのはこれほどに気持ちが目に出るのかと思うほどだった。

……結婚か、と優子は頭の中で考えた。

24歳になり、今まで人並みに恋愛はしてきたつもりだけれど、未だに結婚は自分の中でピンと来ない。

これからどんな人と出会い、付き合い、結婚まで至るんだろうか。

それはもう全くもって真っ新な未来だ。
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