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「でも、気を付けてね。本当に死神だったら…」
「あのね、心配しすぎだから!!死神なんているはず無いよ」
本気で怖がっている美穂の背中を零は、トン、と叩く。それでもまだ、その顔からは不安の色は消えない。
少し呆れつつ、零は自分の病室へと足を進めた。
「ほんとのほんとに、気を付けてね!!」
「分かりましたぁー」
「絶対分かってなぁーい!!!」
背中ごしに美穂の声を聞きつつ、零は窓の外へと顔を向ける。
先程と同じ様に、見える海。ただ違うのは、ハシャいでいた幼稚園児が居なくなった事。
「…こっちの方が好き…」
ポツリと呟いた。
哀しげな瞳が、海の煌めきを映し出す。
「なに、一人で喋ってるの??」
美穂が小走りに零へと近寄りつつ、言った。
「ん?いや、海が綺麗だなぁーって思っただけ」
「そうだね。確かに綺麗だよね」
目を細めて微笑む美穂に、つられて零も微笑む。やがて、見えてきた自分の病室に駆け寄り、扉を開いた。
と、同時に、目を見開きその場に硬直した。
「零?どうしたの?」
美穂が不思議そうに、首を傾げた。
「えっとー…ちょっと外で待っててくれるかな?」
零は病室内に顔を向けたまま、美穂に言う。
「あ、うん。良いよ」
美穂の返事を聞くや否や、急いで病室内に入り、しっかりと扉を零は閉めた。
「どういう事よ!!」