特別なお客さん。〜あなたとの距離〜
「コルク板なら……あ…ります、あります!」

「ありますか!」

私は思わず笑顔で反応する。
コルク板が売っていてそんなに嬉しいというわけでもないのに。

「はい。では、ご案内致しますね。」

また目が合った。
その目がすごく優しくて…温かく感じた。


大原さんの後に付いて行く。

それすらなんだか嬉しくて…。


「こちらでございます。一番下の段に何種類かございますので。」

急にくるっとこっちを向いたからドキッとして身構えてしまった。

「あ、ありがとうございます!!」
照れ臭くて、つい、下を見て軽くお辞儀をする。




「いえ、こちらこそ、いつもありがとうございます。では、また。」


大原さんはそう言って、行ってしまった。



こちらこそ…いつもありがとう…ございます…??


それって…私がここに何度も買いに来てるのを覚えてくれてるから…?
それとも、私がパン屋の店員だってわかってるから…?


何気なく言ったことかもしれない。
だけど、それが嬉しかった。
私のこと、覚えてくれているってことが。

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