僕らのはなし。①


言われた通り髪を乾かすと、そのまま寝ようかとも思ったけど目が冴えちゃって、柚瑠と少し話してからにしようと思った。

柚瑠の部屋の前に言ってドアをノックしてもなかなか出てこない。

「おかしいなぁ。
もう寝ちゃったのかな??」
仕方なく部屋に戻ろうとしたけど、廊下の窓から外で独り浜辺に座り込む人が見えた。


「寝ないんですか?」
そう声をかけ、私はその人物…結城先輩の隣に腰掛ける。

「眠れなくて。」
「私も何か目が冴えちゃって。」
「これ。」
先輩は自分の傍らに置いてあった鉢植えの花を見せた。

「ガーベラ…。
これ、どうしたんですか?」
「さっきもらった。
この近くの街に住んでる子で、何回か聖奈と来たから馴染みがあるんだ。」
「…そうなんですか。」
「オレンジのガーベラの花言葉知ってる?」
「You are my sunshine.
あなたは私の輝く太陽。
西洋ではそう言うんですよね。」
「知ってたんだ。」
「今日行った市場で聞いたんです。」
「そっか。
要る?」
「貰えない。
そういうのは聖奈さんにあげないと。
元気ですか??」
「元気…なんじゃないかな。」
「そう。
先輩…何か真っ暗闇に吸い込まれそうな感じ。」
「ん?」
「海…。」
本当は向こうで何があったのか聞こうと思った。
けど、聞けなかった。

今の状況を曖昧に答える先輩がそうさせたのか、ただ私がこれ以上踏み込めないと尻込みしてしまったのかは分からないけど。

かわりに出たのは、眺めてる海の感想だった。

「そろそろ戻ろうかな。
先輩もそうしましょう。」
何かこのまま此処に居たら、先輩がその暗闇に吸い込まれてしまいそうだったから、そう切り出した。

「待って。」
先輩はそう言って、別荘の方に向いた私の腕を掴んだ。

「どうし」
「どうしたら良かったんだろうね。
何でかな、夏なのに寒いって感じる。」
どうしたのか聞こうとしたら、そう言いながら私を抱き締め、身体を震わせていた。


どうしたら良いのか分からず、ただジッとするしか出来なかった。
背中に腕を回してあげる事も、振り払う事も出来なかった。






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