僕らのはなし。①


「やめろ!!
終わりだ。」
伊崎がそう言ったら、皆瞬時にやめてラウンジから出ていった。


私は無言で粉を軽くはらってラウンジから出て、気づいたら屋上に来てた。

「何で私が謝んなきゃいけないのよ!!
それに、偉いのはアイツじゃなく、親でしょ?
当たり前みたいな顔して親の力使ってんじゃないわよ。
小麦粉や水を無駄遣いしてるのも腹立つし。
クソ野郎ー!!」
柵をガンガン蹴りながら、そう叫んだ。


「あのさ、煩いんだけど。」
「えっ??」
振り返ると、またもや結城 時雨。
実際会うのは4日振りだけど、その間もちょこちょこ見かけたので、あんまり会わないって感覚はない。

「ここ、やっと見つけた静かな安息の場所なの。
だから、あんまり騒がしいのは迷惑なんだけど。
…何かボロボロだ。」
寝てたのか、起き上がるとゆっくりこっちに歩いてきて、また顔を覗き込みながらそう言うと、ハンカチを取り出して、血が出てる場所や真っ白な粉だらけの制服を拭き始めた。

未だ凄い近い距離に綺麗な顔があって、ドキドキして真っ直ぐ見れない。

こんな時に呑気にドキドキしてる自分が憎らしい。

「あの、汚れるんで大丈夫です。」
「…大丈夫じゃないでしょ。
はい。」
ある程度拭くとハンカチを差し出してくれた。

「ありがとうございます…。」
「それより、ホットケーキの作り方知ってる??」
「えっ??」
「ホットケーキ。」
あまりにも今の状況とズレた質問に聞き返すような感じの返事になっただけなんだけど、先輩はただ聞き取れなかったと思ったのか、もう一度聞いてきた。

「…あぁ、小麦粉と牛乳と卵と砂糖を混ぜ合わせて焼くだけです。」
「そう。
意外と簡単かも。」
私の答えに軽く頷くとやっと近い顔を離してくれた。

そして屋上の入り口に向かって歩き始めた。

「あの、ハンカチ!!
ありがとうございました!!
洗って返します。」
「要らない。
此処にももう来ない。
君、騒がしいから。」
そう淡々と告げると、先輩は屋上から出ていった。


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