僕らのはなし。①


「私、あの時何も知らなかったから。
先輩に言ったの。
まさかそれが現実になるなんて。
先輩、きっと私の事恨んでると思う。」
「そんな…。
あの時がいつの事なのかは知らないけど、湊のせいじゃないよ。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
私はそう言われても、納得できなかったというか、私には何も悪くないなんてとても思えなかった。


その後の夕食の時も先輩の姿はなかった。


それからも先輩の事が気にかかってて、夜中眠れなくて水でも飲もうとリビングに行こうとすると、廊下の窓から浜辺に座り込む後ろ姿を見つけた。

私はそれが誰か分かってるので、その人物に会いに行く事に。


「先輩。
聖奈さんの記事、皆見ました。」
「うん。」
「本当なんですか?」
「どうだろう。
彼女の事、君の方が分かってたね。」
「いや、あの時は別に分かって言ったわけじゃ…ごめんなさい。」
「何で追い掛けろって言ったの?」
「それは…」
私は聞かれて何も言えなかった。


「始めは良かったんだ。
毎晩、夜遅くまでいろんな話をしたりして。
君の話もよく出たよ。
聖奈、君の事がかなり気に入ったみたいだから。」
「そうですか。
私も大好きです。」
「でも、そんな日々は続かなかった。
彼女の仕事が忙しくなって、2人の時間は減っていった。
君、前に言ってたよね。
偉いのは俺らじゃない、親だって。
確かにそうだった。
自分は何も出来ない。
ただ待ってることしか出来なかった。
彼女を愛し続ける事しか出来ない、無力な奴だった。」
「そんな事ないですよ。
先輩、何度も私の事助けてくれたじゃないですか。
そんなつもりじゃなかったかもしれないけど、私は凄く救われたし、心強かった。
もし、先輩が居なかったら、とっとと尻尾巻いて逃げてたかもしれない。」
「君を好きになれば良かった。」
そう言って、先輩は力なく微笑みながら、私を抱き締めた。

私も切なくて涙が出てくる。



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