僕らのはなし。①
でも、その前にアイツと話し合わないと駄目な気がして、SJの教室や専用ラウンジに行ってみた。
「居ない…。」
誰も居ない部屋を見渡してそう呟いた。
てか、誰も居ないなんて、アイツら皆サボったって事?
「はぁ…。
アイツん家まで行くしかないか。」
呟いて、伊崎の家まで自転車で向かった。
家の門の前に到着すると、ちょうどアイツが車で帰ってきたところだった。
無断ながら、敷地内に入り追い掛ける。
「ちょっと…。」
「はっ?
何でお前が居るんだ?」
「話があるの。」
「俺はない。」
「ちょっと!」
車から降りて来た伊崎に声をかけると、驚いた顔をして、私を避けるように車の周りを逃げる。
追い掛けてもやめないので、なかなか話が出来ない。
「とにかく俺に話はない。」
そう言うと、伊崎は運転手を押し退けて車に乗り込むと、走り去ってしまった。
「えっ、ちょっ…もう!!」
私は焦ったけど、イラッとした。
地団駄踏んで、自転車で追い掛けようと自転車を取りに行くと、目の前に高級そうな真っ赤な車が滑り込んできた。
「乗って?」
「えっ?」
「追い掛けるんでしょ?
私の車のが速いから乗って。」
左の運転席側の窓が開いて、グラサンをかけたシュッとした女性がそう言った。
時間が勿体無いので、慌てて乗り込むと急発進した。
一般道路でカーレース並の速さで走る2台の車。
制限速度を守って走ってる車の間を縫うように通り伊崎の車に追い付くと、追い越して前に回り込んで端による形で2台の車が止まった。
私より先に降りた女の人は、車から降りた伊崎に足早に歩き寄ると、いきなり殴り付けた。
「いてぇな!!
いきなり殴る事ねぇだろ、姉ちゃん!!」
「えっ?」
車から慌てて降りてきた時に聞こえてきた、伊崎の怒鳴り声を聞いて驚く。
「姉ちゃん?」
「そう。
初めまして。
私は純の姉の晶よ。」
「初めまして。
私は星野 湊です。」
「噂は聞いてるわ。」
「噂ですか?」
「まぁ、こんなとこで話すのもなんだし、家へ行きましょ?」
「こいつは出入り禁止だ。」
「純、黙って。
ぶっ飛ばすわよ。
さぁ、行きましょうか?」
「はい。」
晶さんの車に再び乗せてもらって、伊崎の家にやって来た。
伊崎は車で追ってきて、帰宅後自分の部屋に籠って出てこない。