僕らのはなし。①
此処でもう会えなくなると思うと、少し寂しく感じた。
何でホットケーキの作り方なんて聞かれたのか…そう考えて、ある記憶に思い当たった。
この間、先輩がレッスン室に忘れていった開かれたまま置かれていた雑誌。
葉月 聖奈さんがホットケーキの作り方の紹介をしている特集だった。
先輩…葉月さんのファンなのかな??
そんな事を考えた自分が無知だったのを知るのはもう少し後の話。
そのままレッスン室に行くのも、この格好では躊躇われ…ロッカーに置いてある体操服とタオルだけ取りに教室に戻ると、直ぐに屋内プールに設置されてるシャワー室に向かった。
この学園には無駄に施設がたくさんあり、シャワー室も屋内運動場用のものと、屋内プール用のものがある。
こんなにいろいろな設備があるにも関わらず、ほとんど使われてない事も多いし、清掃だけはしっかりされてるので、凄い無駄にしてるんじゃないかって、この学園の経営を勝手に心配するくらいだ。
誰もいない脱衣室に入ると、軽く制服の上着やスカートについた粉を払った。
そして、たたんで袋に入れると残りの着衣も全て脱いでシャワー室に入った。
ホテルのバスルームにも劣らないくらいシャンプーとかボディソープとか、いろいろ揃って居たので有り難く使わせてもらった。
体操着を着ると、軽くドライヤーで髪を乾かし、もう面倒なので胸くらいまである髪を後ろでポニーテールに縛った。
それから、その足でレッスン室へ。
時間を忘れて弾き続け、途中誰かが来たのか、キチンと閉めたハズのドアが開いてたのも帰りに気づいた。
帰宅したのは日付が変わる少し前だった。