僕らのはなし。①
最後の勝負の日がやって来た。
今日で全てが決まる。
更衣室で着替えると、既に着替えてる男3人と合流した。
目があって、軽くお辞儀をした以外は、特に言葉は交わさなかった。
「選手入場。」
晶さんのその言葉で私達はプールサイドに出てったんだけど、正直生徒達がたくさんいるにも関わらず歓声が聞こえないくらい緊張していた。
「位置について、よーい!」
ドンッ
スターターピストルの音と同時に先行の結城先輩と神崎さんが飛び込んだ。
結城先輩は結構速くて、あっという間に戻ってきた。
先輩の到着と同時に私は飛び込みスタートした。
近くに四宮さんが居るはずだけど、気にするとスピードが落ちてしまう気がして、考えてる事を振り払い、懸命に泳いだ。
もう少しでゴールって時に何故か暗くなった。
「えっ、何??」
「どうしたんだ??」
タッチして立ち上がると、生徒達のそんな戸惑った声が聞こえてきた。
でも、それは一瞬で直ぐに明かりがついた。
「どっちの勝ち?」
「ねぇ…。」
そんな声が聞こえ、晶さんの方を見ると、さっきまで晶さんの後ろで座ってた伊崎の姿はなかった。
結局、最後の方まで私が先を泳いでたので私達が勝利という事になった。
「2人ともおめでとう!
これで退学も除名もないわよ。」
見送りに出た私達に優しい笑顔でそう言ってくれた。
「晶さん、本当にありがとうございました。」
「そんな…。
私は何もしてないわよ。
私こそ、湊ちゃんのお蔭でバカな弟の成長が見られて嬉しかった。
ありがとね。」
晶さんは私を抱き締めて、そう言ってくれた。
「困った事があったらいつでも連絡してきてね。
じゃあね。」
連絡先のかかれた紙を手渡して、そう言って帰っていった。
「星野、よく頑張ったな!!」
「格好良かったぞ。」
「ありがとうございました。」
晶さんを見送った後、後ろに居た四宮さんと神崎さんがそう褒めてくれたので、お礼を言った。
「時雨…。」
そして、四宮さんは次に先輩の名前を呼ぶと何も言わずにお腹に一発拳を打ち込んだ。
「ウッ!!」
「じゃあまた後でな。」
「じゃあな。」
「あぁ。」
何かそれだけで分かりあったようで、2人は先輩に笑顔を向けてそう言って帰っていった。
先輩も安心したような笑顔だった。
私達も帰る事になり、バイクと自転車がとめてあるところまで一緒に歩く事に。
「「あの。」」
「「ありがと。」」
「「ブッ!!」」
2人で何回も言った言葉がかぶったので吹き出してしまった。
「星野…デートしようか。」
「えっ、はい。」
急な誘いに驚いて、反射的な返事が出てきただけで、頭は全然理解出来てないまま日時と待ち合わせだけ決めて別れた。