僕らのはなし。①


「ごめん!
遅くなって!!」
待ち合わせより少し過ぎて到着してしまったので、先輩に謝った。

「ううん。
そんな遅れてないし。」
「ごめんね。」
優しくそう言ってくれた先輩にもう一度だけ謝った。

「何かいつもと違うね。」
「やっぱり…変かな?
何か家族に見つかって、メイクとかいつもよりやってる感じになってしまったんだけど。」
ジーっと私を見た後に言われた言葉に、不安を覚え聞き返す。

「そんな事ないよ。
可愛い。」
「ありがとう。」
直接的にそう言われて、少し恥ずかしくなったけど、嬉しかったのでお礼を言った。


「行こっか?」
「何処に?」
「俺の好きな場所。
行ってからのお楽しみ。」
「分かった。」
それから、先輩が呼んでくれた車で何処かに向かった。

「着いたよ。」
「ここって…ナイト?」
先輩の言葉で周りを見ると、こないだの厩舎だった。


2人でナイトに草をあげる。

「ナイト、よく噛んで食べなよ。」
「可愛い。」
「ナイトは、クリスマスプレゼントで聖奈がくれたんだ。」
「クリスマスプレゼントに馬…。」
あまりの次元の違うプレゼントにただ、呟くしか出来なかった。


「何か凄いね。
私は小さい頃、犬が飼いたかったんだけど許してもらえなくて。」
「それでどうしたの?」
「数日間部屋に閉じ籠ったけど、面倒見れないから駄目だって。
そう言われて終わりだった。」
昔の事を思い出して、苦笑いで答えた。


それから、先輩と一緒にナイトに乗って走った。
何でだろ?
凄い和やかで楽しかった。



それから、また私達の住む街に戻って、ブラブラしていた。

「あっ、聖奈さん。」
通りかかった道で聖奈さんのポスターが貼られていた。


「きっと元気だよね??」
「その話は今はやめておこう。」
どうしても気になって聞いてみたけど、やっぱりあんまり話したくないみたいで、そう言われてしまった。

「ごめん。」
「ごめんで済んだら、警察はいらないよ。」
「えっ?」
「フフッ」
真面目な顔でそう言われてホントに吃驚したのに、先輩は急に笑った。

この人、ホントに冗談なのか本気なのか分からない時がある。



ご飯を食べて歩いていると、以前伊崎が一方的な待ち合わせを告げた士都麻時計広場前に来た。

伊崎が雨の中待ってたのを思い出す。

あの時はアイツに逆ギレしたみたいになったけど、ホントはそんなに長い時間私の事待っててくれて嬉しかった。


「あっ、プラネタリウム。」
「えっ?」
「あれ。」
ボーッと伊崎がいた場所を見ていると、急に先輩のそんな声が聞こえて驚いて先輩を見ると、指をさしてそう言った。

見てみると、プラネタリウムのポスター。


「行ってみよう?」
「…うん。」
先輩に言われて少し戸惑ったけど、あっという間に手を引かれ連れてかれた。


「初めて来た。」
「そうなの??」
「星野は?」
「私はよく来るよ。
星好きだし、此処近いから。
小さい頃からよく来てた。」
「そうなんだ。」
そう話してると、暗くなって星の映写とナレーションが聞こえてきた。


でも、私は別の事を考えてた。

あの夜の事…。
初めて2人で過ごした、ここに閉じ込められた夜の事。

隣に先輩がいるのに…初恋の人がそばにいるのに、私の心の中には別の人がいた。







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