僕らのはなし。①


「ちょっと待ってて。」
そう言って、一旦部屋に通してくれると、先輩は部屋を出ていった。

この部屋の広さだけでも家と同じくらいの広さがあって、驚きながらも部屋を見渡した。

部屋のいろんなところに聖奈さんの写真や聖奈さんと結城先輩の2ショット写真、幼馴染みで撮ったらしい写真、家族写真などが飾ってあった。

子供の頃だけじゃなく、大きくなってからのもある。

たくさんの時間を聖奈さんや伊崎達と過ごしてきたのが分かった。


「これ…。」
更に見ていると、よく先輩が弾いてるヴァイオリンのケースが置かれていて、持ち上げてみてみると、ケースの隅に小さく相合い傘が書いてあった。

少しなぞって、戻しておいた。



「はい、どうぞ。」
「誰もいないんだね?」
続けて見ていると、先輩がお茶とお菓子を出してくれた。

座りながら何気なくそう聞いてみた。


「使用人は留守の間に仕事をして帰ってくんだ。」
「そうなんだ。」
「だから、家の中に自分以外の人間が居るって不思議なんだけど、君だと何故か気にならない。
一緒にいると楽だし、楽しかったりするし。
何より何か温かい。」
「私が?
そうかな??」
よく分からなくて、そう返す事しか出来なかった。

「何となく、純が君を好きになったワケが分かる気がする。
星野…」
「あっ、これ!
一緒に写ってるのナイトでしょ?
先輩達もまだ小さいね。」
先輩がそう言った後、名前を呼んで顔を近づけてきたけど、咄嗟に私は目についた写真を見つけたように装った。
不自然じゃなかったか心配だけど…。

















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