僕らのはなし。①
受付で名前を言って、病室を聞くとすぐ教えてもらえたので、再び急ぐ。
注意されたりもしたけど、心配で仕方なくて全然スピードを落とす余裕なんかなかった。
「伊崎!!」
伊崎のネームプレートがかかった個室の扉を開け、駆け込むように入ると一斉に室内の視線が集まった。
「星野…」
「伊崎は大丈夫なんですか??」
「お前のとこに行く途中の事故だったんだ。」
「数日間落ち込んでて、今日になってお前に謝りたいって。」
四宮さんと神崎さんは涙声で静かにそう言った。
伊崎を見ると…酸素マスクをつけられ、顔にもガーゼが貼ってあり、目は閉じられていた。
先輩もジッと伊崎を悲しそうに見つめている。
「ちょっと起きてよ!
いつまで寝てるつもりなの?
まだまだ喧嘩したり、伝えてない事たくさんあるんだから。
ごめんね。
謝るのは私の方だよ。
ずっと後悔してたんだよ?
こないだ言えなかった事。
やっと言えると思ったのに…。
目を覚ましてよ!!」
涙が溢れて仕方なかった。
叫ぶようにそう言ったら、ベッドの端に顔を伏せて泣いた。
「本当か?」
泣いていると、耳の近くでそう聞かれた。
「えっ?」
「俺に伝えたい事があるって。」
泣いた顔だなんて気にせず顔をあげると、何故かさっきまで眠ってたはずの伊崎が起き上がって笑顔でそう聞いてた。
「ちょっとどういう事ですか?
先輩??」
「ごめん。
あんまりにも2人が素直じゃないから。」「純、良かったな!!」
「見てみろよ?
素っぴんで完全な部屋着。
よっぽど急いでたんだな。」
戸惑いながら聞いた私に、先輩は笑顔でそう言って、神崎さんと四宮さんも続いた。
言われて自分でも、指摘された事に気づく。
まじで何なの?
いくら私が普段から自分の身なりに手をかけてないからって、ほんとに恥ずかしいんだけど。
でも、皆騙したわりに全然申し訳なさそうじゃなくて…寧ろ楽しんでるようだった。
「…で?
言ってみろよ。
伝えたい事って??」
「もう!
ふざけないでよ!!
どれだけ心配したと思ってんのよ。
こういう嘘つかないでよ、バカ!!」
そう言って、伊崎をポカポカ殴った。
「やめろよ。
悪かったって。
散々待たされたんだから、これくらいは許せよ。」
そう言って抱き締められた。
「放せ、バカ!!」
「はいはい。」
本気で放してほしいなんて思ってないけど、何か悔しくて抵抗してるフリをした。
伊崎は何かニヤニヤしながら流してたけど。