僕らのはなし。①


「うわぁ…美味しそう!!」
あの後シャワーを浴びて、着替えると連れてこられた高そうなレストランの個室。

あっという間に目の前にはたくさんの料理が並んでいて、思わずそう言った。


「食べて良い??」
「あぁ。」
「いただきまーす!!」
お許しをもらって早速手を合わせそう言うと、食べ始めた。

初めて食べる料理も中にはあったけど、どれも美味しくてお箸がとまらなかった。

「はぁ…お腹いっぱい。」
暫くして、目の前の料理がほとんどなくなったところでそう呟いた。


「じゃあ出るか。」
そう言った伊崎の目の前の料理は半分くらい残ってて、確かに食べるより大体食べてる私を見てた気がする。

「もう良いの??」
「あぁ。」
話しながらレジまで行くと、伊崎はゴールドのカードを手渡し、サインを素早くするとカードを受け取った。

その流れるような動作に口を挟む隙もなく、またもや奢られてしまった。


「ちょっと待ってて。」
ある事を思い付いた私は、入り口に向かって歩き出した伊崎にそう告げ、戻った。

そして、先程料理を運んでくれたウエイターさんを呼び止め、料理の残りを包んでくれるように頼んだ。

両親やマコにも少しくらい食べさせたくて。


「お待たせしました。」
「ありがとうございました…。
また来ますね。」
入り口で暫く待って紙袋を受け取ると、お礼を言って踵を返すと誰かにぶつかった。


「あっ…。」
「ってぇな。」
「あら?
誰かと思ったら、星野さん??」
受け取ったばかりの料理を早速落としてしまって、呆然と見ていると、声をかけられ視線を向けた。

「どうしてあなたがここに??」
「あぁ…もしかして、残り物をもらいに来たの?」
いつもの私に嫌味を言ってくる女3人+連れの男の人3人が立っていて、怪訝な表情で聞いた子に続いて、思いついたような子は嘲笑しながらそう聞いてきた。


「じゃあ私達のもあげるから少し待ってなさいよ。」
「それは良い考えね。」
「ボランティアだわ。」
「知り合いなのか?」
「クラスメイトよ。」
「桜ノ宮の質も落ちたもんだな。」
「何してんだ?」
口々に私を見下した会話が続いて、気が滅入ってきてだんだん視線があげられなくなった時、この場では唯一味方の俺様の声が聞こえてきた。

「よう!伊崎!!」
「何してんだよ、お前…。」
「ちょっと…。」
挨拶する男の人を軽くスルーした伊崎は周りを見回した後、私を見て呆れたようにそう聞いてきたので、私は答えを濁した。


「おい、久しぶりに会った旧友無視かよ。」
「それよりこの子誰?」
「趣味変わったんじゃねぇ??」
「まさか。彼女…なわけないよな。
使用人か??」
「黙れ。」
馴れ馴れしく話しかける彼等に伊崎は低く怒りを抑えたような声で静かにそう言った。


「何だよ?
怒ってんのか??」
「もしかして、マジでこんな子と??」
「黙れって言ったはずだ。
これ以上余計な事ほざくと親父の会社が倒産する事になるぞ。」
伊崎は私を頭から足の爪先まで見て、見下すような感じでそう言った男の人達の先頭の人の胸ぐらを掴んでそう言った。




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