僕らのはなし。①
「わっ、悪かったよ。」
「俺じゃねぇ。
こいつにだ。」
「すいません。」
「反省してます。」
「許してください。」
焦ったように1人が伊崎に謝ると、その人の服を掴んで私の方に投げるように突き出した。
「行くぞ。」
謝罪を見届けると、私の手を握って歩き出した。
私も反論せずに続いた。
それからまた車に乗り込み移動して、何故か伊崎の家の敷地に入った。
戸惑っていると、屋敷の周りをゆっくり進み、裏のところで庭を向いて止められた。
運転手さんが降りると、何故か助手席に移動するように言われて、従うと伊崎も運転席に座った。
その瞬間正面に白い布が垂らされ、後ろから照らされる光で映像が映し出された。
それから飲み物やお菓子が運ばれた以外は誰も近づかず、伊崎と2人で密閉空間で映画を見ていた。
はっきり言って少し気まずい。
状況を意識したら、上手く息も出来なくて。
口の中に唾が溜まるけど、飲み込む音が気になって飲み込めない。
あれ?私どうしたんだろう??
こんなだった??
映画に集中出来ない上、ラブシーンが映し出された時にはかなり困惑した。
お願い…こっち見ないで。
絶対顔赤いし、何か車内のクーラーなんて関係ないかのように熱を感じるから。
そんなの見られたくない。
焦りながら飲み物に手を伸ばしたら、たまたま同じタイミングで隣の飲み物に手を伸ばした伊崎の手とぶつかった。
自然と伊崎に視線を移すと、伊崎もこっちを見た。
だんだんと近づいてくる伊崎の顔にドキドキしながらも目をつぶった。
♪~
だけど、ナイスなのかバッドなのか分からないタイミングで、携帯の着信音が。
「ごめん。
…はい?」
伊崎に申し訳なく謝ってから、電話に出た。
「姉ちゃん、聞いて?
凄いんだ!!」
「はぁ?何が??」
「大変だよ!!」
何かいつも落ち着いてるマコが興奮してるようでそれだけ言うと、電話は切られた。