僕らのはなし。①


「ん?何だろう??
何か分かんないけど、そろそろ帰るね。」
「あぁ…。」
謎だったのは確かだけどそれは口実で、未遂とはいえキスしかけた事で余計に困惑して、接し方が分からなくなってしまった私はそう言って、伊崎の戸惑ったような返事を聞くと帰ってしまった。




「はぁ…。
ただいまー。」
家に着いて、溜め息を1つすると、そのままのテンションで中に入っていった。

すると、リビングの食卓机の上には何故か私が伊崎と食べてきたのと同じように豪華な料理が並んでいて、家族は美味しそうに舌鼓をうっていた。


「どうしたの?
これ…。」
「伊崎さんだよ!」
「何か急に料理人の方達が来て、パパッと魔法のように手早く作って帰っていったの。」
「良い人なのね…。」
話しながらも箸と口は動き続ける我が家族たち。
天然なのか、ただただ美味しそうに食べていた。

まぁ、私は持ち帰れなかったから、伊崎が配慮してくれたのに気づいて嬉しかったんだけど。

『ありがとう。』
『それは家族の分だ。
お前食うなよ。』
お礼のメールを送ると、そう返ってきた。


私は言ってないのに、家族に持って帰りたいのだと悟って手配してくれた伊崎の思い遣りにまた惹かれてしまったのだった。







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