僕らのはなし。①
14.お宅訪問とコンクール。
そんなこんなであっという間に夏休みは過ぎていき、あと数日で終わりという日の夜…遂に痺れを切らしたのか奴がやって来た。
夜の11時近くに突如鳴らされた家のインターホンに家族も警戒しないわけがなく、何故か無意識に掃除用のモップを掴んだパパを先頭にモニターも見ずに玄関へ。
一度開いた扉は相手を認識するとパタンと閉められた。
「今のって。」
「伊崎さんだよ。」
「でも何で??」
「とりあえずお待たせするのは失礼だから入ってもらおう。」
私以外の家族がそう話し合い、扉を開けると伊崎が少し真剣な顔で立ってたと、後から聞いた。
「何してんの?
えっ、何で??」
何も知らない私はそんなやり取りが終わった頃、部屋から出て、玄関で騒いでる家族に声をかけてから、伊崎の存在を認めてそう呟いた。
驚きで固まる私をよそに、家族は喜んで伊崎を迎え入れ、何故か室内なのに靴を履いたままで偉そうに1人だけリビングのソファに足を組んで座った伊崎と、机を隔てて家の主にも関わらず、絨毯に直接ならんで座る私の家族たちという、明らかにおかしな状況を生み出した。
ただし、私は座らず伊崎の事を立ったまま見下ろし腕を組んで睨んでるけどね。
「…で、何で家に?
とりあえずここは靴脱いでよ!!」
「あぁ…。」
若干苛つきながらも伊崎の脱いだ靴を玄関まで持っていった。
「何時だと思ってんの?
夜の11時なんですけど。」
「別に良いじゃない。」
「誰か寝てた訳じゃないしな。」
「姉ちゃん、落ち着いて。」
私が責めるように言うと、ママとパパ、マコは良い顔をしてそう言った。
「星野のお父さん、お母さん。
…今晩泊めてください。」
何故かさっきまで黙ってた伊崎は両親に向かって、急にそんな事を言い出した。
「えっ、はぁ?
何で家??」
「面白そうだから??」
「いや、迷惑だから。」
「湊、こんな夜中にお帰しするのも危ないと思うぞ。」
「姉ちゃん、良いんじゃない?」
「布団で大丈夫ですか??」
焦る私とよく分からない理由を言った伊崎に、最早泊まる事には何の異論もないような呑気な私の家族たち。
私の意思なんか無視で進んでいくお泊まり会の話に誰も疑問がないのが逆に面白くなかった。
私が一番まともだと思う。