僕らのはなし。①
それからも忙しい日々は続いて、私はコンクールに向けて、更に集中しなければいけない日々が突入した。
バイトも少しいつもより減らしてもらって、私よりも多忙な実里さんにもついててもらったり、無理なら1人でひたすら弾いた。
それでも嫌にならないのはやっぱり私がピアノを好きだからだと思う。
気づいたら夏休みもとっくに終わって、2学期に入ってた。
伊崎とはあれからまたなかなか会えなくて、あっという間に10月初めのコンクールの日がやって来た。
「ふぅ…。」
何回経験しても慣れないコンクールに緊張から、息を吐き出した。
準備は済んでて、この日ばかりは毎年両親が用意してくれるドレスを数回あるコンクールで着回していて、今日もそれを着ている。
色は薄い水色で、肩紐がなく少し心もとない。
「湊ちゃん…落ち着いて。」
「実里さん。」
「いつも通りに弾けば大丈夫よ。」
「はい。」
「行ってらっしゃい。」
「はい。」
少し緊張しながらも、先生のお墨付きをもらい、控え室から移動した。
今日は実里さん、うちの家族と柚瑠が来てくれてる。