僕らのはなし。①
「…チッ、おせぇ。」
暫く待ってもなかなか柚瑠の彼氏は来なくて、伊崎が舌打ちをしてそう言った。
待ち合わせの時間はとっくに過ぎてる。
伊崎も何だかんだ遅刻だったしね。
コイツは我慢が苦手だし、待たされるのは大嫌いみたいで、かなりキレていた。
「確かに来ないね…。」
「すいません。
湊もごめんね。
ちゃんと言っといたんだけど。」
私も頷いた後、柚瑠が申し訳なさそうに謝った。
「ちょっとでん」
「お待たせー!!」
柚瑠が電話をしようと鞄から携帯を取り出そうとしたところで、言葉を遮るように呑気な声が聞こえてきた。
3人一斉に見てみると、遅れてきたにも関わらず、全然悪びれた様子のないチャラそうな男の子が手を振りながら歩いてきた。
「ちょっと橋本くん!!」
「いやぁ、起きたら時間過ぎてたから焦った焦った。
あっ、君が柚瑠の親友?
はじめまして、俺、橋本 守。」
「はじめまして…星野 湊です。
こっちは伊崎 純です。」
「君の彼氏??」
「はぁ…まぁ。」
清々しいくらい笑顔のまま謝る事なく喋り続ける彼にもう怒る気にもなれなくて、苦笑いしか出なかった。
「あっ、そろそろ行きましょうか。」
「う、うん!
そうだね!!」
「じゃあしゅっぱーつ!!」
伊崎が爆発しそうなのを読み取って、無理矢理切り出した私に、合わせて橋本の腕を引いて歩き出した柚瑠に続いて、橋本がそう叫んだ。