僕らのはなし。①
あれから何かモヤモヤして仕方なかった私が向かったのは、やっぱり学園のレッスン室で…気が済むまで感情を発散させるように弾き続けた。
「あれ?
結城先輩…。」
レッスン室の扉を開けると、結城先輩が立っていた。
「はい、どうぞ。
あの…どうしてここだって分かったの??」
「星野は分かりやすいから。
モヤモヤしたり、何かに悩んだりするとここにくる。
そして今モヤモヤしてる。
だから、分かった。」
とりあえず中に通し、珈琲を入れて出すと、気になってたことを聞いた私に、先輩はそう答えた。
「そんなに分かりやすいかな??
…先輩、伊崎の事なら話さないからね。」
「別に聞いてないけど。」
「今回ばっかりは許せない。
私の事なら兎も角、柚瑠を悲しませるなんて。
誰よりも私達の事応援してくれたのに。
柚瑠の事無視して、アイツと付き合い続けるなんて出来ない。」
「結局話してるけど??
まぁ、良いや。
1つだけ…言っておくよ。
ムカついたからって純は言ってたけど、それだけが理由じゃないと思う。
男って必ず女の前では行動に理由がある。
いつも、絶対にね。
俺の経験に基づいた事。
じゃあね…。」
それだけ言うと帰っていった。
その言葉の意味を考えたけど、よく分からなかった。
ただこのままにはしておけなくて、柚瑠を連れ出した。
「ちょっと湊…。」
「柚瑠、不安なのは分かるけど、連絡待ってるだけじゃ進まない気がするの。
それでも良いの?
私もついてるから、とりあえず会って話そう。」
戸惑う柚瑠の手を引きながらキョロキョロと歩いてると、後ろから不安気な声が聞こえてきたので、そう言って更に橋本がよく居るらしいクラブの近くの通りを歩いた。