僕らのはなし。①


「急に何の用なんだか。
純くん、私が悪かったです。
許してください。
…なんて言えるわけないでしょ。
何?純くんって。
恥ずかしくて呼べないわよ。」
次の日の夜…急に近くの公園に呼び出された私はそうブツクサ言いながら、歩いていた。


「えっ…」
小さな公園に入った瞬間、目に飛び込んできた光景に足を止め、見入ってしまった。

公園の遊具がライトで飾り付けられててとても綺麗だったのだ。

ゆっくり足を進めてくと、奥に円が布でしてあって、その中に伊崎が立っていた。


「どうだ?
感動したか??」
「うん…凄い綺麗。
でも、どうして?」
「シャンゼリゼ真似てみた。」
「こんな感じなの??」
「あぁ。
いつか本物見せてやる。」
私の答えを聞いて、伊崎は満足そうに微笑んでそう言った。

「何か…クリスマスのイルミネーションみたい。」
「そうか?
クリスマス、好きなのか??」
「うん!楽しくて凄い好き。
伊崎は??」
「あんまり良い思い出がないからな。
そんなに好きじゃないかもな。
家族はずっと家にいないし。
俺にとって、その日は誕生日と並ぶくらい1年で一番寂しい日だった。」
「そうなんだ。」
話しながら、ゆっくり歩いて、ブランコにそれぞれ腰かけた。


「だから、家族ってなんなのか…俺には分からなかった。
でも、お前ん家行って、ちょっと分かった気がする。
お前ん家、良いよな。
また行きたい。
お前の母さんの料理食べたり、一緒に寝たり。
スーパー銭湯も楽しかった。
また行っても良いか?」
「良いって言わなくても勝手に来るんでしょ。」
「本気で言ってんだぞ。
ほんとは毎日行きたいくらいだ。」
そう言って、ブランコから立ち上がると、私の前まで歩いてくると、しゃがみこんで私を少し真剣な顔で見上げてきた。


「本当は毎日でも星野に会いたいんだ。」
「伊崎。」
見つめあう形になって、だんだん近づいてくる伊崎の顔。
だけど、ドキドキするのも全然嫌じゃなくて、目を閉じると2人の距離がゼロになった。







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