僕らのはなし。①
「何だ?
こんなところに呼び出して。」
次の日、学校の後に待ち合わせを決めて呼び出すと、目の前で車がとまり、仏頂面で降りてきた伊崎がそう言った。
「駄目だった?」
「いや別にそんなことはないけど。
何か企んでたりしないよな?
お前から呼び出しとか珍しいから怪しい。」
「ちょっと変なこと言わないでくれる?
雰囲気ぶち壊さないで。
行こ。」
「何処に??」
「良いから。」
行き先は告げずに歩き出した。
勿論、手には昨夜作ったクッキーが入った箱が入れてある紙袋を持参してる。
近くのデパートに入っていくと、少し絵が飾ってあるブースを見て回り、お客さんが一息出来るよう設置してあるスペースのソファに座ってもらい、飲み物を取りに行った。
「はい。
どうぞ。」
「ここはうちの客の専用で作ったとこだ。
お前、買う気ないだろ。」
自分と伊崎の前に珈琲を置いて座ると呆れたような目を向けてきた。
そう、ここは伊崎の家が経営するデパート。
飲み物が無料で飲め、ゆっくり座って話せるから連れてきたのだ。
「まぁ、そうだけど。
良いじゃない、別に。
毎回タダでもらってるわけじゃないし。
それにしても、サービス精神に欠けるんじゃない。
継ぐかもしれない人間がそんなケチ臭い事言ってるなんて、この会社の将来が不安だわ。
まぁ、私は関係ないけど。」
「お前な…。
で、それは??」
私の言葉に更に呆れたような感じだったけど、視線を私の隣に置いてある紙袋に移してそう聞いてきた。