僕らのはなし。①
「えっ、これは…。」
「見せろ。」
「あっ、ちょ」
止める間もなく強奪した伊崎は中の箱をすんなり開けると、箱の中身を見て固まった。
「これ…。」
「クッキーなんだけど。
柚瑠がお世話になった人に作るって言うから。
嫌だった?
なら、返して。」
「俺のだ。」
さっきからジッと見てるだけだったから要らないのかと引き取ろうとすると、慌てたように避けられた。
「さぁ、クリスマスまで1ヶ月と迫ってきました。
カップル限定でゲームをしまーす。
参加希望者どしどし受付中ですよ。
商品は最新式の当社のタブレット。
ご希望の方々はお集まりくださーい。」
テンション高めの声でそう聞こえてきた。
「ゲームだって。
行こ。」
「ちょっ、おい。」
無理矢理伊崎を引っ張って行った。
「はい。
締め切りますよー?
それでは、ルール説明をします。
スタートと同時にカップルのどちらかがお姫様抱っこもしくは、おんぶでも肩車でも良いのでやってもらいます。
最後まで残ったカップルに商品のタブレットをプレゼント致します。
お荷物は足元に置いてください。
それでは準備お願いしまーす。」
その声を聞いてみんな持ってた鞄や買い物したショップバックを足元に置いた。
そして、お姫様だっこや肩車を始めた。
「おっ!
彼女さん頑張りますね!!
彼氏さーん。
彼女さん乗れないみたいなので、屈んであげてくださーい。」
一組一組見ていって、隣は彼女さんが彼氏をおんぶしていたのでほめると、私達に目を向けて、伊崎にそう言った。
伊崎は黙ってかがんだので、首に腕を回して、背中に乗ると腕を後ろに回して固定してくれた。
「彼氏さん、見かけはソフトなのに、意外とクールですねー。
…はい!OK!!
始めます。
スタート!!!!」
伊崎がそうしたのを見届け一言言うと、残りのカップルを見て回って、スタートがかかった。
「彼女さん、大丈夫ですか?」
「余裕です。」
「おんぶされて、どうですか?」
「フフ…。」
「幸せみたいですねー!!」
順番にインタビューが進んでいき、私達も聞かれたけど、どう答えていいのかわからず、愛想笑いを溢すとそう言われてしまった。