僕らのはなし。①
ー純sideー
あの後星野が無事に家に帰れるのか心配で、車の中でこっそり時雨に送り届けてくれるようメールを打った。
家に着くと、問答無用で部屋につれてかれたが、ただジッとしていられるはずもなく、ババァの部屋に押し入った。
「アイツには手を出すな。」
「何の話なの?」
「とぼけんな。」
「…あぁ、あの子ね。
デパートで一緒だった。
私がそんなに暇に見えるかしら。
そんな事に構ってる暇はないの。
伊崎財閥理事にはね!!」
最後には珍しく怒鳴るようにそう言った。
ババァは何考えてるのか分からねぇし、昔からやる事に相手に対する遠慮なんてもんはねぇ。
今回の事もかなりキレてるらしいから、不安になるばかりだった。
翌日…時雨の家を訪れ、玄関の前で電話をかけつつ中を見てみると、時雨は中からこっちを見ていた。
昔からの仲の俺達は基本相手の家を訪れる際、連絡しない。
だから、今日も目が合うと笑いを溢しながら中に入っていった。
「どうしてそれが…?」
「さぁ…どうしてかな??」
中に入ると、時雨の座ったソファの前の机の上には見覚えのある箱が置いてあった。
それは俺が昨日生まれて初めて愛した女からもらったもので、持ち帰れなかったクッキーの箱だった。
俺が聞くと、奴は箱を開けて中のクッキーを1つ摘まんで一口食べやがった。
「おい!それは俺のだ!!」
急いで時雨からクッキーと箱を取り上げ、手を叩いておいた。