僕らのはなし。①
「お前は…油断も隙もねぇ。」
「そう?」
「なぁ…時雨。
ガラにもなく、不安なんだ。
天下の伊崎財閥の跡取りの俺がって笑うかもしれねぇけど。
ババァがアイツに何するのか予想もつかねぇ。
アイツに何か起こりそうな気がする。
一番恐いのは…アイツに何か起こっても、俺が気づかない事だ。」
何となく窓の方を見ながら、不安な胸のうちを呟くように溢した。
「純…確かにそうかもしれないけど、星野もそうヤワじゃないよ。
知ってるだろ?
星野なら大丈夫。
それに、何かあれば俺達だってついてるから。」
時雨は俺を安心させるように肩に手を置いて、そう伝えてきた。
「そうだよな。」
頷きながらも自分にそうだと言い聞かせた。
まだこんなにも早く、俺の希望が打ち砕かれる事になるなんて思いもしなかった。