僕らのはなし。①
ー湊sideー
翌日はバイトが早く終わったので、家で家族団欒を楽しんでいた。
すると、急になったインターホン。
そして、相変わらず相手を確認しない私の家族。
「ちょっ、誰か確認しなよ。」
「でも、そんな危ない人がうちみたいな普通の家を狙うとは思えないのよね。」
「多分柚瑠ちゃんか伊崎さんだとおもうんだけど。」
夜に訪ねてくる人間なんて限られてるので、うちの家族は私が止めるのも聞かずそう言いながら出てしまった。
けど、その人物を見て、家族全員固まる事になる。
だって、その人物は…家族でさっきまで観てたテレビに出てた、伊崎のお母さんだったから。
「今日は急にお訪ねして驚かれたと思います。
申し訳ございません。
息子の事でお話があってまいりました。」
とりあえず伊崎のお母さんと後ろの秘書らしき人に中に入ってもらい、椅子に座ってもらうとこう切り出された。
何故か伊崎が家に来た時みたいに向かいに並んで座る私の家族達は床にそのまま座っているので自然と見上げる形となっている。
やっぱり変な状況だけど、うちの家族は皆少しズレてるのか誰も不思議に思ってないらしい。
「そうですか。
よく息子さんには私共もいつもお世話になっております。」
「うちの息子、こちらに伺った事あるんですか?」
「えぇ。
実はお泊まり会もして、親睦を深めたんですよ。」
「私と息子は一緒にスーパー銭湯にも行かせていただきました。」
「そうですか…。」
楽しそうに話す家族達に対して、伊崎のお母さんの表情はどんどん冷えていってるような気がして、私はヒヤヒヤしていた。
いや、駄洒落とかじゃなくて、まじで。