僕らのはなし。①


「…っ!!」
「何するのよ!!」
「確かにうちは貴女方からしたら大した家庭じゃないかもしれない。
けど、大事な一人娘をそんな扱いされる覚えはないわ。」
私も家族ですら、ママが行動を取った事に驚き、伊崎のお母さんが秘書らしき人からハンカチを受け取り、拭きながら怒鳴り声をあげると、普段のおっとりした感じからは想像出来ないくらい冷たい目で見て低い声でそう言った。

「私達は別にお金がほしいわけじゃない。
娘が幸せなら伊崎さんでも良いと思っただけ…。
とっととお金を持ってお引き取りを。」
「後悔するわよ。
二度はチャンスを与えません。」
「娘を侮辱されたのに何もしないよりは良いわ。」
伊崎のお母さんはママに鋭い視線を向けそう言ったけど、ママは毅然とそう言い返した。

「時田、帰るわよ。」
「はい。」
秘書らしき人は伊崎のお母さんに従ってアタッシュケースを閉じると、2人はあっという間に出ていった。



「ママ…。」
「湊…貴女が引け目を感じる事なんてないわ。
貴女は自分がやりたいように行動しなさい。
さぁ、塩をまかないと。」
私に微笑みながらそう言うと、いつものママらしくおっとりした感じでそう言ってキッチンに歩いていった。


「ママ、格好良かったな。」
「うん。」
「最高だったね。」
パパと私とマコでママの後ろ姿を見ながらそう話した。




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