僕らのはなし。①


ー陣sideー

先日、星野の父親が会社をクビになったって純から聞かされた。

やっぱり純のお袋さんが動き出したらしい。


正直星野の事は、最初はそこまで気にならなかった。
ただ、純にズバズバものを言うその神経の図太さに興味がわいて、今では妹のような存在になってる。



「そこまでやるかな?」
「でも、何か気になる。」
純と新は不在の中、各々別々の行動をしながらも時雨とこれからの星野への心配事について話していて、心配ながらもまだどこか何とかなると軽く見てる俺に対して、時雨は漠然とそう言った。

時雨はきっと自分では気づいてるのか気づいてないのか分からないけど、俺達とは違う想いを星野に抱いていると思う。

純の彼女だから、きっと気づいててもそれを本人や純に伝える事はないと思うけど。



ギターをいじりながらも時雨の心は此処に有らずって感じ。

俺は絵画展の書類や作品リストに目を向けながらもそんな時雨の事も気にするようにしていた。

「確かにあの人は会社や純の事となると躊躇ないけど。」
「だからこそ、星野への当たりが強くなると思う。」
「まぁな。
でも、今は出来る限りの事をするしかない。」
「うん。
分かってる。
俺も純に言ったから。
心配ない。
俺達も居るって。」
「そんなに心配なら確認してみろよ。」
「携帯貸して?」
「はぁ?
携帯?電源ないのか??」
「良いから。」
時雨は言い切って、携帯を俺から受け取ると、何処かに電話し出した。
多分、星野にだと思うけど。


「もしもし?
…もしもし、四宮さん??」
何処かに繋がったらしく、何故か俺に携帯を返してきた時雨。
耳に当ててみると聞こえてきたのは星野の声…ではなく、その友達である柚瑠ちゃんの声だった。


「あぁ、柚瑠ちゃん。
元気してる??」
慌てる俺を見て、笑顔を見せた時雨。
やっぱりコイツはマジで侮れない。

普段ボーッとして見えて、何も考えてなさそうなのに、誰よりも鋭かったりする。

そんな時雨にハメられた俺は、柚瑠ちゃんと気まずさを感じながらも何ともないように会話をするハメになった。


気づいたら時雨は消えていた。
はぁ…神出鬼没かよ。





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