僕らのはなし。①
ー純sideー
「ぶっ!!」
「ハハハッ!!」
「フフフ」
新の噴き出すような笑いから続いて、陣・時雨と笑い出した。
「笑うな!!」
「だって、ぶっ、回し蹴りって!!
しかも、一発で純を仕留めたしな。」
「2週間もったのも驚きだし、逞し過ぎだろ!!
星野 湊!!」
笑いを漏らしながら、そう言う陣と新。
時雨もまだ笑っている。
アイツが俺達以外の人間の話で、笑うなんて珍しい。
話題の中心…星野 湊は、俺の今のターゲット。
2週間くらい前にアイツのダチがラウンジで、俺に粗相を働いた。
キレた俺はソイツにされたようにジュースをぶっかけようとしたら、寸でのところで星野に止められ、逆にやられた。
この学園の奴等は俺を恐れ、崇め、憧れの対象として見る。
だから、そんな事をされたのは初めてだった。
俺は今まで気に入らない事をした奴はとことん制裁を下し、学園から追い出してきた。
星野も少し今までの奴等と違う気もしながら、いつも実行させてる奴等に命令して、制裁をいくつか下した。
星野は、あんまり反応を示さなかった。
俺の前では泣き顔一つ見せなかった。
でも、昨日のは俺が命令しての事じゃない。
アイツをいい加減懲らしめろって命令しただけだ。
それが何故かレイプ紛いの事をしやがった。
それを止めたのが時雨だという話にも驚いた。
時雨は極端な奴で俺達3人と聖奈…この幼馴染み4人以外の人間は関心もなかったし、視界にすら入れなかったから。
そんなアイツが星野を助けた。
それは一番の驚きだった。
「何??」
俺の視線に気づいたのか読んでいた本から、視線をこっちに向けて聞いてきた。
「いや、別に。」
気にならない事もないが、時雨には聖奈が居る。
まさかそんなはずはないとは思いつつ、聞き出せずにいる。
「純?」
「どうした??」
「えっ、何が??」
「何か落ち着きないぞ。
ソワソワして。」
「そんな事ない。
もうすぐ来る頃かな。」
俺は自分の行動を誤魔化しながら、時計を見てそう言った。
「ん?誰が??」
「礼儀知らずの女。」
「あぁ…星野 湊。
彼女、まだ居たんだ??
今どれくらいもってる??」
「大体2週間くらい?」
「よっし!!俺の勝ち。」
「あぁ…マジか。
あの子思ったより強いな。」
「はい!
こないだのモデルの連絡先。」
「はいはい。」
陣と新はよく俺のターゲットがどれくらいもつかで賭けをする。
今回は陣が勝ったらしく、陣のスマホを受け取った新は残念そうに速打ちで賭けの景品の誰かの連絡先を登録していた。
「純、いい加減女相手にムキになるなよ。」
珍しく俺の制裁の事で時雨が口を出して来た事にやっぱり疑問が浮かぶ。
「時雨こそらしくねぇんじゃねぇ??
今度は助けたりすんなよ。」
「おい、何の話だよ??」
「俺らだけ仲間外れかよ。」
俺と時雨の会話を聞いてた陣と新が騒ぎ出す。
「別に、それほどの事じゃねぇ。
時雨が星野を助けたってだけだ。」
「いや、まじかよ?」
「大した事だろ!!」
「別に。」
事実を教えた俺に興味津々な感じの2人。
時雨は特に何も答える気がないらしく、短くそう言った。
それがアイツが来るまでの話で、予想外の星野の行動に俺達4人はかなり驚いた。
そして…俺はある考えにたどり着いた。