僕らのはなし。①
「湊…。」
「ごめん、暁ちゃん。
大丈夫??」
「お前の方が何か痛そうな顔してる。」
後ろから暁ちゃんがやって来て謝ると、呆れたような顔でそう言われた。
「殴られたり蹴られたの俺なんだけど。」
「どうして、伊崎を煽ったくせに手出さなかったの??」
「俺は気に入らないけど、お前が大事な奴だろ。」
「うん。
ごめんね…。」
もうそう言われたら謝る事しか出来なかった。
それから、私と伊崎の不仲説が出回り、伊崎も学園に来ないからか、無言の肯定ととった生徒達が嫌がらせをするようになった。
ある時は、教科書に落書きされたり、階段ですれ違い様にわざとぶつかられたり、廊下で足引っかけられてこけそうになったり。
トイレに閉じ込められて、水ぶっかけられたり。
ある意味伊崎の制裁命令の時よりきついかもしれない。
足を挫いても、顔に傷つくっても何とか手だけは守った。
数日間そんな事が続いて、それでもバイトは休まなかった。
「湊ちゃん、今日も可愛いね。
いつものお願い。」
「はい。
暁ちゃん、牧原さんいつもの。」
その日も最近よく来てくれるお客さんのお世辞を受け流して、注文をとると暁ちゃんにオーダーを伝えた。
「すいません。」
「はーい。
ごちゅ…結城先輩。」
その後お客さんが呼ぶ声がしたのでそっちに行くと…結城先輩が座ってた。
驚きで言葉を途中で止めて先輩の名前を呟くように呼んだ。
「何してんの?」
「君こそ。」
「先輩、ちょっと場所変えて話そう。
暁ちゃん、ちょっと奥の部屋使わせて。」
「あぁ。」
「ちょっと来て。」
私が聞いたって先輩は聞き返すだけで答えなかった。
このままここで話すのは良くないと思って、暁ちゃんに小さめの声で、奥の部屋を使わせてくれるよう頼むと先輩の腕を掴んで連れてった。
スピカには従業員用の休憩室はなく、いつも店内で休憩するんだけど、ここは暁ちゃんの自宅も兼ねてるので、奥に寝室とリビングみたいな部屋が2つある。
リビングみたいな部屋に連れて入ると、まずお茶を出した。