僕らのはなし。①
「帰るぞ。」
「うん。
…あれ?」
伊崎にそう言われて立ち上がろうとしたけど、足に力が入らなくてたてない。
「どうした??」
「ごめん。
何でか立てない…。」
「はぁ…。」
伊崎は溜め息を溢すと、なんて事ないようにお姫様抱っこした。
「ごめん。
重いのに。」
「別に。
ちゃんとつかまってろ。」
そう言うと歩き出した。
普段伊崎は自分の鞄すら持たない。
別に非力って訳じゃないんだけど、面倒らしくて携帯も財布もポケットに突っ込んでる。
だから、面倒くさがらずに私を抱き上げる事に少しきゅんとしたのは内緒。
言ったら調子のるから。
「あっ、そうだ。
ある人の言葉で思ったんだけど…伊崎もしかして暁ちゃんの事誤解してない??」
「どう誤解してるってんだよ。
あのクソ野郎の事なんか聞きたくもねぇ。」
「ちょっと人の従兄弟をクソ野郎呼ばわりするのやめてよね。」
「…はぁ?従兄弟??」
「うん。
そうだけど。」
私の言葉を聞いて驚いたように大声を上げた伊崎に引きながらも頷いた。
「なら早く言えよ!」
「ごめん。
誤解してんじゃないかって気づいたの最近だし、自分から突き放した手前連絡取りにくかったから。
暁ちゃんと伊崎会った時は私が誘い断りまくってたから不機嫌なのかと思ってたから。」
「あながち間違ってねぇけど、自分の女が男といて良い気はしねぇだろ。
しかも、あん時アイツの事昔からの良き理解者なんて言いやがって…。
特別な関係なのかって勘違いすんだろ。
紛らわしい言い方すんなよ。」
「ごめん。
…何かいろいろあり過ぎて眠い。」
「おい。」
伊崎の引き留めるような声が聞こえたけど、何かこの数時間恐怖感があったし、最近寝不足なのもあって意識を繋ぎ止める事は出来なかった。