僕らのはなし。①
「んっ…。
ここは?」
「俺ん家だ。
散々心配かけといてよく寝てたな。」
目覚めるとベッド脇の椅子に偉そうに座ってた伊崎がそう言った。
「えっ、ごめん。
あっ、バイト!!
それに家!!」
「連絡してある。
お前のツレもアイツも、お前の家族とか皆心配してたからな。」
「そっか。
ありがとう。
今何時?」
「朝の8時。」
「はっ?
起こしてよ!
2人とも学校遅刻じゃない。」
「この時間まで呑気にグースカ爆睡しといて。
いびきと寝言うるさかったぞ。
今日は我慢しろ。」
「はぁ?
私はいびきかかないから。
嫁入り前の女の子に向かって。」
今日は遅刻でも我慢しろって言われたことより、いびきとかの方にちょっとイラッとしたのと、羞恥心から手が出た。
「叩くなよ。」
「いい加減な事言うからでしょ。」
「はぁ…星野。」
「何よ。」
「距離置きたいなんてもう言うな。
凄い虚しかった。」
「うん…。」
「何かあったらまず俺に言えよ。」
「できる範囲でね。」
「絶対だ。
他の奴に頼られて、俺だけ知らないとかむかつく。」
「そうだね。」
「約束しろ。」
「守れるか分からない事は約束しない。
でも、伊崎の気持ちも分からなくはないから…努力する。」
「頑固過ぎるな。」
呆れたようにそう言いながらも、目が優しかった。
やっぱりこいつとギクシャクするのは自分で思ったよりもきつかったみたい。
何一つ解決してないのに、何だかんだこの空間が安心出来るから。