僕らのはなし。①


「湊ー、聞いてよもう。」
ゴールデンウィークの連休明けの教室。
可愛い元気な声が不満げに大きく響いた。

登校早々、私に言ってきたこの子は2年になった時に転校してきた、この学校で唯一の友達の有馬 花ーアリマ ハナー。
目がクリクリしていて、肩までの髪もフワフワしてる凄い可愛い子なんだけど、この学校のお嬢様特有の嫌味な感じが全くなく、気取らない凄い良い子。

私とも普通に接してくれる。

「どうしたの??」
「昨日ね、たまたまバスに乗ったら痴漢にあったの。
最悪。」
何かに怒ってるらしい可愛く口を膨らませた花に聞いてみると、そう返ってきた。

彼女は庶民的な事も好きらしく、たまにそうやって家の車以外で出掛けるらしい。
大体はこの学園の生徒なら何処に行くにも、何をするにも運転手付きの自家用車で移動をしている。
だから、始め花にその話を聞いた時、凄い好感持てたし、親近感も湧いた。

「まじで?
今度そんなやつが居たら私がブッ飛ばすからいつでも言ってね??
あと、気をつけるんだよ??」
「うん。分かった。」
全然偏見とかなく私と行動してくれる花を嫌な気分にさせた奴が許せなくて、私はかなり力みながらそう言うと、少しおかしそうに微笑みながらそう返事した。

基本彼女はホワワンとした天然さんだから。
私の方が心配なくらいだ。

「ねぇ、今日バイト?
ピアノのレッスン??」
「今日はバイトだから、帰り途中まで一緒に帰ろうね。」
「うん!!」

それから直ぐに授業が始まり、勉強に勤しんだ。
ちょっと眠いけど。


「湊!!カフェ行こう??」
「うん。」
昼休みに入るチャイムが鳴ると直ぐに花が誘いに来た。
私は鞄からママが作ってくれたお弁当を持って花と普通の高校なら到底考えられないような、生徒たちのために特別に作られた豪華なカフェラウンジに向かった。

1年の時は友達なんて居なくて、作る気にもならなくて、いつもママ特製のお弁当持参の私は、教室で1人静かに食べてた。

けど、花と友達になって、高いランチはごめんだけど、お弁当をカフェラウンジに持ってって、一緒に食べるようになった。


よく他の生徒たちに見下したような顔で見られ笑われるけど、花はそんな事気にせずにおかず交換までしてくれるくらい気楽に付き合ってくれるから。
周りの目は気にならない。

別に負けてるなんて思わないし。



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