僕らのはなし。①
「それ…。」
心当たりがあった私は何となく話が見えてきて愕然とするしかなかった。
「うん。
姉ちゃんの思ってる通り。」
今まで黙ってたと言うか、一言も口を開かなかったマコが呆れたようにママを見てから私に視線を移して頷いて肯定を示した。
そのアタッシュケースを何処で見たのか…。
そんなの考えなくても直ぐ思いつく。
私には全く無縁だったものだから。
その時以外で見たことなんてないし。
それは、この間伊崎のお母さんが私に別れてほしいと手切れ金がわりに持ってきたお金を入れていたものだった。
つまりは…一度は断ったけど、ママはパパの為にもう一度頼みに行き、受け取ったと言う事…。
「ママ…返してこい。」
「でも、このお金がないとパパが。
だから、私はあんな人に頭までさげたの。」
「分かるけど、それがどういうお金か分かってるだろ?
なら、答えは1つだ。
この事は自分で何とかするから、必ず返してこい。」
それだけ言うと、パパが玄関から出ていくドアの音がした。
パパ、こんな寒いのに、上着着ていかなかった。
私は気になって、パパの上着を部屋から取ってくると、自分のも取りに行って羽織ると外に出た。
ママは泣いてたけど、マコが宥めてたし。