僕らのはなし。①
「パパ…。」
暫く外を探してると、近所の公園のブランコに座ってるパパを見つけた。
小さい頃、なかなか外で好きに遊べない私の為をこの公園に連れてきて、よくブランコを押してくれたっけ。
「パパ…もう寒いのにどうして上着くらい着てかないの?」
「湊…。」
「とりあえず風邪引いちゃうから、はい。」
「ごめんな。」
「ん?何が??」
何となくパパが申し訳なく思ってる理由は分かってたけど、曖昧に答えながら隣のブランコに座って軽くこいだ。
「こんな…大事な恋の邪魔しか出来ない親で。
いつも、好きにさせてやれなくて。」
「何言ってんの?
私は結構自分のやりたいようにやってるし、ピアノさせてもらえてる事感謝してる。」
「でも伊崎さんの事、好きなんだろ?」
「私にとってはパパやママ、マコの方が大事。
家族が一番。」
「いや、きっと俺達と同じくらい大事だと思ってる。」
「何で私自身ですら、そこまでか分からないのにパパに分かるの??」
「こんなだけど、ずっと湊の事は見てるから。
父親の俺には分かる。」
「でも、こっちこそごめんね。
私達が別れれば一番誰も傷つかないで済むのかもしれない。
けど、それで良いってどうしてか思えなくて。
パパには一番迷惑かけてるね。」
「湊…好きなら好きで良いんだ。
人ってなくしてからじゃないと、自分の大切なものに気づけない事が多い。
だから、自分の気持ちをよく考えて、正直で居てくれ。」
「ありがと。
パパ…大好きだよ。」
「俺もだ。 」
そう言って、ブランコから立ち上がったパパは久々にブランコを押してくれた。