僕らのはなし。①


「要件は何かしら?」
翌日…私は例のアタッシュケースを持って、朝から伊崎のお母さんに会いに会社まで訪れていた。

学校は休日だから休み。

昨日の夜、家に戻った私たちは、家族で話し合ってやっぱりお金を返す事にした。



「これを返しに来ました。」
「それはあなたのお母様にお渡ししたものだけど。」
「はい。
でも、これはやっぱり受け取れないので。」
「必要だから私に頭までさげて受け取ったんでしょ?
プライドなんかでそれを無駄にするの?」
「プライドじゃ…ありません。
家族皆で話し合って決めたんです。
それじゃあ失礼します。」
私は一礼すると、踵を返して歩き出した。

「必要ならもっとお渡しするわ。
好きな金額を言ってくれればそれだけ払うわ。」
その言葉を聞いて、私は歩みを止めざるを得なくなった。

「結構です。」
「頑固ね。
本気で純と付き合うつもり??」
「それは…私達の問題だと思います。」
「確かにあなたの家族やあなたを不快にさせた事は謝るわ。
だから、あなたは純とは釣り合わない事認めて、別れてちょうだい。」
「確かに、伊崎と私はあまりにも違う価値観で釣り合わないです。
それは認めます。
でも、知ってますか?
今、私達は同じ場所で同じ方向を見てます。
もうこれ以上私達家族を侮辱するのはやめてください。
決してお金の為に流されたりしません。
約束したんです…アイツと。
絶対にあなたを理由に離れないって。」
「そう。
立派な考えね。
でも、あなた達にとって提示したお金は必要だと思うんだけど、後悔しないのかしら??」
「綺麗事に聞こえるかもしれませんが、人の気持ちに値段はつけられません。
伊崎はもうその事に気づいてますよ。
失礼します。」
そう言って、その部屋から出た。









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